シーズン前半が終了し後半戦に向かわれる方も多いと思います。
ちょうど今は前半を振り返り後半戦にむけてトレーニングをどう組み立てるか計画するのに良い時期です。
そこで今日はシーズン前半のレビュー(振り返り)について紹介したいと思います。
これを行う事でシーズン後半の目標設定を明確にし、ピークに向けてより的中率の高い練習プランの策定が可能になります。
PCGがコーチングするアーロン選手の2013年のプランニングを例にとってレビューの方法をご紹介して行きたいと思います。
1.シーズン前半のベストパフォーマンスを把握する。
シーズン前半に出したベストなパワーをピックアップし過去と比較します。
これによりシーズン前半と過去を比較し、どの程度まで自分自身を強化できたかを確認することができます。
パワーメーターをお持ちでない方は、同じ場所で測ったタイムでも代用可能です。
(例 1kmTT、4km個人追い抜き、5分の登りTT、20分の登りTTなど)
アーロン選手の例
2.検証
上記のデータを参考に時間単位ごとに強化が上手く行った点、そうでなかった点を検証し原因を特定します。
下記を参考に実際の練習内容と照らし合わせ、どの領域の練習が十分だったのか?もしくは不十分だったのかを検証します。
・5秒のスプリントは、冬の間の筋力&スピードアップの指標になります。
・1分 アネロビック耐性をあらわし、簡単に調子を測る目安にもなります。
・5分 VO2Max領域は、最大酸素摂取量強化の指標になります。
・20分 FTP領域の能力を表します。有酸素能力と乳酸除去能力の指標です。乗り込みとFTP付近の練習をどれぐらいこなしたかが大きな要因となります。
アーロン選手の場合、2013年前半を過去と比較した結果、全ての領域で自己ベストの95%以上のパワーを発揮し、バランスよく強化が出来ている事がわかります。もしどこかの領域で大きくパワーを落としていれば、後半戦はその部分の強化に力を入れます。
上記のベストなパワーが出た日を振り返り、調子が上がる時期のトレンドを見つけ出します。
アーロン選手の場合、2013年前半と共に過去2年間のデータも検証し下記のトレンドを導き出しました。
アーロン選手の好調時にみる過去のトレンド
(a)3~4週間のコンスタントなトレーニング
(b)続く2~3週のビルドアップ
(c)最後に4~7日のリカバリー
過去、このプロセスを経た時、彼はベストパフォーマンスを発揮しています。
詳細にみると
(a)コンスタントなトレーニング時は、一日あたり70-90TSS/dの負荷
(b)ビルドアップはCTL91.2まで積み上げる。
(c)リカバリーではTSB+10まで回復させる。
これらが彼のトレンドを支える指標です。
※用語は下欄解説ご参照のこと。
これらをベースにシーズン後半のトレーニングを組み立てます。
(a)コンスタントなトレーニングは週550-750TSSあたりで推移させる。
(b)ビルトアップはCTL71.6程度まで積み上げる。
(c)リカバリーは週350-450TSS程度まで落としTSB-10まで回復させる。
シーズン後半は、前半ほど身体がフレッシュではありませんから、あまり深い疲労状態に追い込むのは得策ではありませんし、シーズン前半よりもシャープさ(AC・VO2Max以上の強度)を磨くことがレース&トレーニングでは重要になります。
その為、上記の指標を参照しつつ高い強度と充分な回復に主眼を置いてシーズン後半のトレーニングを行いました。
その結果、アーロン選手はトレーニングで2013年8月1日に20分の自己ベスト363wattsを叩き出し、レースでは個人タイムトライアルで優勝しています。
このようにパワーデータを解析することで、パフォーマンスが上がるトレンドを掴みトレーニングの指標にすることで、より確実性が高い強化を行う事が出来ます。
みなさんもシーズン後半戦をより良いものにする為に前半戦のパワーデータをレビューし、練習プログラムを立てる参考にされてはいかがでしょうか?
ご意見・ご質問等がございましたら、下記までご連絡をお願いいたします。
takashi@peakscoachinggroup.com
用語解説
・TSS…トレーニング・ストレス・スコアの略。トレーニングの強度とボリュームを一元管理できる。
FTP領域で1時間走った場合のTSSは100となる。
例 トレーニングでTSSが200に達した=1時間のTT2本分の負荷を体にかけたことになる。
・CTL…クロニカル・トレーニング・ロードの略。長期の練習量を測る手法。通常過去42日間の負荷量を示す。
・ATL…アキュート・トレーニング・ロードの略。短期の練習量を測る手法。通常7日間の負荷量を示す。
・TSB…トレーニング・ストレス・バランスの略。CTLとATLのバランス。フォーム(仕上がり)の指標になる。0以上の場合、疲労が抜け良いパフォーマンスを発揮できる可能性が高い。
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