Tuesday, September 30, 2014

シクロクロスに要求されるパワーについて Part1

パワーメーターの紹介は一旦お休みして、今日はInterbikeの期間中に開催されたクロス・ベガスの写真と共にシクロクロスに要求されるパワーについてご紹介しましょう。


シクロクロスは、急速に人気を上げている冬に行われる自転車競技です。

以前はロード/MTB選手のオフトレという位置付だったシクロクロスですが、シクロクロスを専門にする選手も世界的に増えてきています。

それに伴い近年は、シクロクロス向けのパワートレーニングの研究も盛んに行われるようになってきました。



他の自転車競技とシクロクロスを比較した時、大きな特徴して挙げられるのは「レースの間、常に繰り返されるインターバル」「不安定な路面による負荷の変化」そして「担ぎ・階段などがある特殊性」です。それらをパワーデータで説明していきましょう。


(1)シクロクロスのパワーデータ
CX Cat Pro/1/2 FTP340w
左のグラフは、カテゴリー1の選手のシクロクロスレースのデータです。

ご覧のように1時間のレース中めまぐるしくパワーは変化しています。この変化は激しい順位争い、連続するコーナー、路面の変化(舗装路から芝生、泥、細かなギャップなど)から起こっています。

こういった要因から、レース中パワーが30秒以上安定して発揮されることは無く、ON/OFFが両極端なパワー変動を繰り返しています。

スタート直後の位置取り争いによって900wを超えるスプリント、FTPの120%を超える30秒以内のON、その直後には0wattまで下がるOFFがゴールまで延々と繰り返されるデータは、まさにシクロクロスレースを表しています!


(2)パワー分布
上記のレースデータをパワーゾーンに分けてみましょう。
最初に目を引くのは一番左の0-20wattsが15分(23.7%)ある事です。この時間はシケイン・階段・下り、そしてコーナーで一瞬足を止めている時間などの合計です。
シクロクロスの場合、ペダリングしていないと言っても、決して楽に休んでいるわけではありません。



上のデータをパワーゾーンごとに分けたのがこちらです。
右から
・AC(>120%FTP)  17.4分(27.6%)
・VO2Max(106-120%FTP) 6.8分(10.9%)
・FTP(91-105%FTP) 5.3分(8.4%)
・テンポ(76-90%FTP) 5.2.分(8.2%) 
・エンデュランス(56-75%FTP) 4.1分(6.6%)
・リカバリー(<55%FTP) 24.2分(38.4%)です。

この図からシクロクロスがいかにON/OFFの差が激しい両極端のパワーゾーンで行われているか分かります。


(3)シクロクロスのケイデンス
左の図はケイデンスの分布です。
ここでも最初に目につくのは一番左のバー(0-5rpm)です。
時間にして15分(23.7%)、図1.のパワーデータと同じく、ここでもレース中15分間ペダリングしていない(シケイン・階段・下りなど)事が見て取れます。

またレース中のケイデンスで一番多い領域は80-90rpmで10.4分(16.6%)に上っています。この回転数は同じ時間で行われるクリテの平均ケイデンス90-100rpmに対して10rpmほど低い=トルク重視であることを示しています。


(4)シクロクロスのペダリングトルク
4分割分析
こちらはレース中のペダリングトルクを分析したグラフです。このグラフはパワーの成り立ちを表します。
例えば400wのパワーが発揮された場合、ケイデンスが早い状態で400wが発揮されたのか?ケイデンスは遅いけれどもトルクが高い状態で400wが発揮されたのか?を知ることが出来ます。

左の図ではレース全体を黄色と赤のドットで表してあります。赤色はレース全体の中でFTPを超えた時のデータです。4分割されたグラフの中で赤色のドットは左上の部分に集中しているのが分かります。これはシクロクロスのレースで高いパワーを発揮するとき、トルクが高く、ケイデンスが遅い状態が多いことを示しています。


(5)データからわかるシクロクロスのパワー特性
・レースの間中、激しいインターバルが続く→高いFTPとVO2Maxに支えられたアネロビック能力が必要。

・ON/OFFの差が激しい。→パワーの変化が大きい中でのリピータビリティ(反復能力)が要求される。

・ケイデンス特性→ロードよりもケイデンスが遅い為、トルクフルな走りが求められる。

・レースの1/4(15分)は、ペダリングしていない時間=シケイン・階段・下り、そしてコーナーで一瞬足を止めている時間などに費やされている為、それらをこなす高度なテクニックが必要。

これらを念頭に置いてトレーニングをすすめる事が必要になってきます。
次回は実際のトレーニングのメニューについてご紹介していきましょう。








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中田尚志

中田尚志…Peaks Coaching Group プラチナム認定コーチ。
パワー・トレーニング・バイブル(原書:Training and racing with Power Meter)の著者、ハンター・アレン(Hunter Allen)氏のもとでパワートレーニングを中心にコーチングを学ぶ。
25年に及ぶ日本・アメリカでのレース経験を持つ現役選手。バージニア州ベッドフォード在住。現在でも週末はPro/1/2レベルおよびマスターズでレースに参加している。2013 全米自転車競技連盟主催パワートレーニングセミナー修了







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